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2008年7月

2008年7月31日 (木)

真っ白い壁の部屋にて…

その閉まった扉を確認してから、ゆっくりと前へと姿勢を変えると、小さく息を吐いた。
そして、辺りを見渡す。
そこは、洞窟とは違う、人の手が完全に加えられていると思われるような煉瓦作りの廊下だった。
床や壁に均等に積み重ねられている煉瓦が妙な感覚を覚えさせた。
一通り、周辺を確認してから、前方に視線を移す。
その視線の先には、煌々と輝く真っ白な光が見えた。
…?
その先は、あの光は…、出口?なのであろうか、それとも…。
色々な憶測が頭を駆け巡った。
男の子の言う通り、もう終わりなのかもしれない、となれば、あそこにあるのは、俺の知らない…、信じることの出来ない世界が待っているのではない…。
多くの不安が体を駆け巡った、が、A子は、必ずここにいると言う、確信?を持つことで不安を解消する事に気持ちを整えた。
その為に、瞳を閉じ、一つ呼吸を置く。
そして、瞳を開けると、意を決した様に光に向かって歩み始めた。
足元は、煉瓦であったが、意外としっかりした作りで、でこぼこの感覚は感じられなかった。
数十m程歩くとその煌々とした強く眩しい真っ白の光は、部屋から漏れている光とわかった。
尋常ではない輝きに目を手で覆いながら部屋に入る。
目が明るさに慣れてくるまでは、それほど時間は掛からなかった。
微かに慣れた光の中で、瞳を凝らしながら部屋の概要を見渡す。
その部屋は、真っ白い壁が印象的で、壁には大小様々な形の鏡が数えられない程並んでいた。
中央には、足の長い鉄製のベッドがあり、その上には……。
白いシーツをかけられ横たわっている人影が見えた。
そこにいたのは…A子?
確信は持てなかった、一度辺りを見渡し、安全を確認すると、そばに駆け寄った。
横たわっている人影の傍らに立つと、ゆっくりと顔を確認した。
そこにいたのは…A子であった。
自然に笑みが出くると、小さく息を吐き出した。
眠っている表情をしばしみていると、一昨日の情景が頭を駆け巡った。
唇の感触や暖かい胸の温もり、そして、小さく震えながらも一つになった時の微笑み、そして、熱く、同じビートを打った吐息…。
俺の胸で、多くの表情を持ったA子が弾けていた。
再び一つ呼吸を置いて、気持ちを整理する。
そして、彼女の安否を確かめた。

微かだがテンポの良い息をしていた。
…眠らされている…のであろうか。とにかく生きている、間に合った…。の気持ちで胸をなでおろした。
その時だった。
…ん?
俺は、後ろを振り返った。
確に誰かが後ろを通った気配を感じた。が、誰もいない。
鏡が無造作に飾られている真っ白い壁だけが静かに俺たちを見ているようであった。
辺りを壁、鏡を注意深くうかがう…。と!!
…ん?
今度は前の方で気配を感じ、ゆっくりと気配を感じた方に視線を移した。
心拍数が上がる。
恐怖であろうか、それとも…。
予感の様な感覚と共に、体全体が強張る感覚と血の巡りが悪くなる様な感覚に覆われた。
そして…。
A子のつま先が一番最初に視界に入り、その視界は、ゆっくりと上に向かって進んだ。
腰…胸…肩…顔…そして!!
俺は、ゆっくりとA子の顔からその先にある影に視界を移した。
そこには!!

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2008年7月30日 (水)

扉の向こうへ!!

確かに強く、駆け足に近い速さで洞窟を進む。
子供たちの声は、確かな言葉で確認出来る様になってきた。
…もう少しだ!!
俺は、はやる気持ちを抑えつつ扉へと向かっていた。
そして…。
そびえ立つ扉を確認すると、足取りを緩やかにした。
俺の気配を感じた子供達は、子供らは遊びをやめ、俺を見ていた。
6人の子供達が確認できる。
その中に入って行く俺。
子供達の向こうに目的の扉がある。
俺は、真っ直ぐに扉に向かって進んだ。
子供を分けて扉に着く。
すると、あの女の子、三ツ編みの女の子が俺の前に大きく腕を広げて立った。
「ダメだよ、この中に入ったら、全て終わってしまうよ。」
俺はその子を見る。
女の子の表情は悲しそうな表情であり、必死さが伝わってきた。が、その子の話を聞いてはいられない。
俺は、微笑みながらしゃがみ込んで女の子と視線を合わせると話しを始めた。
「大丈夫だよ。わかっている、でも、ここ入らなければならない。おねぇちゃんを助けなきゃなんないんだよ、おねぇちゃん来ただろう?」
女の子は何も言わない。
口を真一文字して俺を見ている。
俺は、その表情を見ながら再び優しく微笑んで見せた。
女の子は、俺の表情を見るなり小さく俯くと、きびすを返す様に激しく首を横に振り。
「来ていないよ!!」と言う。
その時!!
あの男の子、体に毛らしきものの無い不気味な男の子が女の子の前に来て大きく頷き、扉の方へ指を差した。
…やっぱり。
男の子は、女の子を突き飛ばすと俺の手を扉に誘った。
女の子は、よろけながら転ぶと、激しく泣きながら立ち上がった。
「ダメ、入っちゃダメ…」
と大きな声で叫ぶ!!
俺は女の子を見ると、微笑み、ゆっくりと重い扉を開けた。

冷たく痛いほどの冷気が扉の向こうから流れてくる。
重々しい扉を通れるだけ開けると、一歩扉の向こうに足を踏み入れる。
そして、覗き込むと、ゆっくりとその場へと体を動かす…。
体を扉の向こうに入ると一つ呼吸を置く、すると、女の子が扉の外から声を掛けてきた。
その声に振り返り、先ほど出てきた扉を見る。
「剣は抜かないで、まだ扱えないから…これだけは覚えておいて、パ……。」
と女の子が声にすると同時に、あの男の子が突き飛ばすのが見えた。
「キャ」っと、言いながら女の子は視界から消え、それと同時に不気味な笑みを浮かべた男の子が俺を見ていた。
目玉を大きく不気味に輝かせながら…。
俺は、その表情が強く印象的だったせいか、女の子が言った言葉の最後の方が聞こえなかった。
その言葉が、たとえ大事であっても、今の俺には目先のA子が最優先であった。
女の子の泣き声が響いている…。
その声を、聞きながら2・3歩進むと、重々しく扉が閉まり始めた。
その音と不気味な感覚に振り返ると、男の子が目玉を大きく不気味に輝かせていた。
喜びに満ちている感じの瞳に俺が映し出されている。
その子を凝視した俺。
それからまもなく…。
まったく言葉を発せ無かった子が、ガラガラな声で言葉発した…。
「もう………終わりだよ。」
と…。
そして、小さく笑みを浮かべながら扉を閉めきった。
その顔は餓鬼。
俺はそう思った。
体中に悪寒が走り、背筋が凍る感覚を覚えた。
重々しい音と共に扉がしまる。

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2008年7月29日 (火)

始まりの場所へ!!

その風景を見たその時、俺の背筋に悪寒が走った。
あの夢の場所…、草原に6本の木、それも三角形を作り出して立っている。
…思い出した。
あの後ろ姿は……。
俺は夕べ見た、A子の後ろ姿を思い出した、そして、横顔…。
あの時感じた感覚は…。
…そう言う事だったのか…。
何故気付かなかったのか…。
彼女は俺を待っていたんだ。
鏡の中の住人に見初められた自分をたぶん、最近では一番可愛がっていた俺に助けを求めていたんだ…。
夕べ気付いていたなら、帰さなかったのに…。
後悔の波が次々に押し寄せてきた。
その波に飲み込まれた感覚の中で俺は俯いてしまった。
情けない自分がそこにいた。
守る?…おかしいよ、それは。いい事を言っていた俺は、結局何も出来なった。
守る?…おかしすぎるよ、それは。なんだかんだ言っても、無力なんだよ、俺は…。
守る?…おかしいか?今気付いたから、何ができるんだ?どうなんだ?もしかしたら…?
…まだ、間に合うか…。
…まだ、間に合うだろう…。
…いや、まだ間に合う!!…。
沢山の自問自答の末に、今やらなければならない事が明確に見えた瞬間。
俺は顔を挙げてその木が生えている場所を見据えた。
…根拠は無い。
…だが…助ける、そして、今を終わらせる。
この夢?この現実?…どうでもいい。
とにかく、意味の解らない今を終わらせる!!
強い決心に包まれた俺は、その場所を目指し歩きはじめた。
力強く進む足取りには、迷いは無かった。
これが、夢であっても、現実であっても、俺は俺が思っている事へと向かう、ただそれだけで進んだ。
しばらく行くと木が生えている場所に来た、そして、じっくりとその場を見渡した。
…どこかにあるはずだ、入り口が……。
何度もその場所を散策したが、見付からない。
時間だけが過ぎて行った。

木を叩いてみたり、草を分けてみたり…、色々な行動をとってみたが何も見つからなかった。
俺は行き詰まり、その場に座り込み無意識の中で木々を見ていた。
そして!!
…!三角形!はじまりの夢で見上げた口は、確に三角形だった。
何かに弾かれた様に勢い良く立ち上がると、三角形の中心に立った。
その下は、芝生が夕日に照らされ赤みかかった薄く、そして、正気がある緑色で生えていた。
その時、爺さんの言葉を思いだした。
『強く願うんだ…』
…もしかして。
俺は、目を閉じて願った。
『口よ、開いてくれ!』
すると、一瞬、全てのものの動きがスローになり、俺は宙に浮いた感覚を覚えた、と同時にあの冷たい風が体の中を突抜けると一気に急降下をはじめ、まもなく地面に叩きつけられた!
『痛っ』
俺は背中から叩きつけられ、息が苦しく、少しむせびながらも深呼吸をして痛みを和らげた。
痛みが引けると同時に立ち上がると、上を見た。
…思った通りだ。
上には、以前見た事のある風景があった。
そこには、ぽっかりと開いている三角形の口が見えた、その向こうには満天の星空が無数の煌きを放っている、吸い込まれそうな夜空が見えていた。
妙な感覚が体を駆け巡る。
すると、微かな子供らの声が聞こえて来たのに気付いた。
暗闇に目をむけゆっくりと声のする方へと向いた。
…まだ…必ず間に合うはず!!
そう思いながら声のする方へと向い歩き始めた。
あの扉へと…。
全ては、扉の向こうにあると信じて……。

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2008年7月28日 (月)

終焉へと続く道へ!!

A子の家へと向かう道は、道路沿いから砂利の敷かれている小道に入る。
それから数メートルの場所に小さな門があった。
初めて入る敷地である。
門の向こうには、木製二階建ての大きな家があった。
20年以上は経っているであろう、その家は、茶色の壁が印象的であり、大きな玄関が昔の作りを物語っていた。
その家を目指して、門を通り抜けた。
外観からは、人影が感じられなく、心落ち着かない感覚が体を駆け巡った。
その門から、少し進むと何かに頭が激しくぶつかった。
その衝撃で後退すると共に、激痛が体を駆け巡った。
張り詰めた痛さが、頭から足元に響く。
痛みを堪えながら、ぶつかった頭を摩り、その場を確認した。
…なんだ?
多分、はたから見るとパントマイムをやっているようだったろう。
そこには、確に透明の板らしき物があり、先には進めない状態だった。
場所を変えても、A子の家には行けない…。
すぐそこにA子の家があるが行けないもどかしさに、俺は、何度も彼女の名前を叫び、その板を叩いた。
…どうして?
彼女は、既にいないと感じている自分に腹が立ち、いつしか、叫び声もいつしか泣き声に変わっていた。
…ごめん…。
心の奥で呟き、その場に崩れ堕ちた。
幾分か泣き、やがて冷静さを取り戻した時に、足元で小さく光っているものに気付いた。
俺は、その光っている物を手にする。
それは……コンタクトレンズ?
確信は無いが、それはA子の物だと感じた。
A子が言った。
「私に何かあったら、私の生きた証を探して…、形見にしてね…」
の言葉を思い出した。
俺は、ハンカチにコンタクトを包み、ポケットにしまいこんだ。
そして、俺は、このままでは終われない何かと彼女を守れなかった憤りに押され立ち上がり考えた。
…どうしたらいいんだ?
色々な考えが頭を駆け巡った。
そして…糸口はひとつに絞り込めた。
…爺さんに会おう!!と。
元来た道を急いで引き返すと車に飛び乗り、急発進でその場を後にした。

キュリキュリと白い煙を上げながら車は動き、もの凄いスピードで会社に向かった。
道には俺以外の車は無い、そして、今まで出した事の無い程のスピードで道を駆け抜けた。
風景が線となっていく感覚がした。
この先に、どんな結末があるかは解らないが、今は…。
そう思うと、無意識の内にアクセルを踏み込んでいた。
会社までは、時間はかからなかった。
急ブレーキをかけながら車を止めと、車から飛び降り駆け出し、博物館へと真っ先に進んだ、その最中にも多くの罵声を浴びたが、事は終焉に近付いていると思い、その声には反応しないようにしたと言うか、そんな暇はなかった。
博物館に着くと、勢いよくその中に入り、爺さんのいる管理部門の部屋になだれ込んだ。
すると、爺さんはまた、俺を待っていたかのようにこちらを見ていた。
「教えてくれ!どうしたらいいんだ!やつは何処にいる。」
爺さんの言葉は、冷静であった。
「そろそろ、時間かな?」
といいながら立ち上がり、俺の前を通って俺が入ってきた扉へと向かった。
「何処に行くんだ!!
その言葉に、俺を見ないで言う。
「裏の公園に行こう」
と…。そして、ドアノブに手を掛けゆっくりとドアを開け俺を促した。
「裏の公園?」
爺さんは小さく頷きながら部屋を後にした。
俺は、その後を追う。
俺と爺さんは博物館を後にすると、裏の公園に向かった。
ある程度行くと、細いトンネルに入り進んだ。
そのトンネルの長さは2~3十メートル程あっただろうか。
爺さんを先頭にそのトンネルを進んだ。
そして、トンネルの出口手前で爺さんは急に立ち止まると俺の方を向いた。
「ここからは、一人で行け。そして、強く願う事を忘れるな。必ず願いは形になるから」
と言った。
その時、爺さんの偽眼が激しく金色の光を放った。
俺の後ろに進む爺さんが力強く、俺の背中を一つ叩くと、元来た道を戻り始めた。
!!
俺は、爺さんを見る。
爺さんは、振り返る事も無く淡々としたペースで歩いていった。
その後ろ姿を少し見送ってから一つ深呼吸をして、トンネルの出口へと向かい進んだ。
まもなくトンネルを抜ける。
そして、そこにある風景に驚嘆した。
……まさか……。

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2008年7月27日 (日)

【夢】か【現実】か…!?

翌朝、A子との夢の様な行為を思い出しながら、目を醒ました。
確かに、まだ微かにA子の香りが体を包んでいるような感覚があった。
俺は、ベッドから出ると、部屋のカーテンを開ける。
シャーっと小気味の良い音と共に異様な程に眩しい朝日を体で浴びた。
そして、外の風景を見る。
…今日は?
ふと感じた違和感。
俺は、見慣れているはずの風景に以前よりも増して違和を感じた。
家の周りに咲いている黄色く映えたタンポポの花…。
俺は、瞳を閉じながら振り返り、ゆっくりと瞳を開けて部屋に見た。
その部屋は、きちんと整理されている。
…。
俺は、何かを感じたが、その何かは分らなかった。
少しだけその場に佇み、考えた。が、やはりその何かは分らなかった。
大きく溜め息を一つしてから、着替えをして部屋を後にした。
階段を降りると、居間へと出る。
その居間のソファーには両親が並んで座り俺を睨んでいた。
2人の気配には、殺気さえ感じる程であった。
俺は、2人をチラッと見ながら止まる事もなく居間を後にした。
…迷惑はかけない。
その視線を背中に感じながら、俺は家を出た。
暖かい陽射しが瞳に痛い。
丸形のサングラスをしながら車に乗り込むと一度家の外観を見た。
そして、溜め息をつきながらエンジンを掛け、ゆっくりと車を進め、A子の家に向かった。
小さな町を抜け、隣町に通じる橋を越えると、しばらく直進する。線路をわたると、すぐに国道に出た。
そこから十数分後にはA子の家に着く。
辺りは、面白い程何も存在しない風景があった。
走っている車は俺だけ、だから、A子の家には着くまでは時間はかからなかった。
国道を曲がるとA子の家はすぐだった。
俺は、A子の家に曲がる道に入った時に、それに気付いた。
その気付いた物とは、見慣れた車であった。
ハザードがたかれ、A子の家のそばの道路に止まっていた。
K子だ!!
今、俺が付き合っている彼女の車がそこにあった。
その車を見て、俺の心拍数が上がった。
そう、後ろめたさからだった。

K子の車の脇をゆっくりと通り過ぎる、視線を合わせない様に顔は前だけを見ている。
A子の家の前に停め、ゆっくりとルームミラーでK子の車を見た。
…?
K子の車には、人影が感じられなかった瞬間!!
「ねぇ!!。」
その声に、俺は驚いて助手席を見た。
助手席に座っているK子に気付くと、心拍数が物凄い勢いで上がった。
…いつ乗った!!
その言葉が、俺の頭を駆け巡った。
K子は、鋭い瞳で俺を見ている。
視線を合わせられない。
K子は、ゆっくりと俺に向かって話し始めた。
「あなたを見ていたわ。あなたを誰よりも愛しているわ。あなたが選ぶ事は出来ないわ。全ては、シナリオ通りだから。」
…シナリオ通り?なんだそれ?全く意味が解らない。
俺は、K子を見て言う。
「K子。聞いてくれ、弁解じゃないんだ、A子を助けたい。だから…」
「だから、行くの?」
K子が言っている
『行くの?』の意味が、理解できない。
…何処に?A子のところに?何で?守るため。それから?……どうなるかわからない。交わったから?そういう訳ではない。これからもずっと?……いるのかぁ?俺は…A子と…わからない…。
そう自問自答したがどう答えたらいいのかわからない。
だが、選択肢は、今は一つ。
それをK子にはわかってもらいたかったが時間が無いと言う思いが俺の頭の中を駆け巡っていた。
「ごめん、説明している時間が無い!!
と、その場を取り繕いながらドアノブへ手をあてた時。
彼女が、強い口調で行った。
「行きなさい。でも、これだけは覚えておいて!!わたしは待っている、あなたと一緒になれるなら、あなたと同じ道を歩むから…。そして、ここからは、【夢か現実か】貴方が決めるのよ!」
というと、小さく微笑み、車を降りた。
その表情を見送る。
K子は振り返ることもなく自分の車へむかった。
急いで車から降りて彼女の後ろ姿を見る。
…決める?今までは、現実…?俺は、あの夜の事を思い出した。
…どう言う事だぁ?
A子の唇の感触や暖かい胸の温もり、そして、小さく震えながらも一つになった時の微笑み、そして、熱く、同じビートを打った吐息…。
現実なのか?
そう考えているうちに、K子は車に乗り込み、こちらを一度見てからエンジンを掛けた、そして、表情を変える事無く、ゆっくりと車をUターンさせ国道に向かって走り始めた。
K子の車が視界から消えるまで見送り、そして、A子の家へと歩き始めた。
現実か夢かを考えながら……。

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2008年7月25日 (金)

夢の様な一週間

彼女を乗せたまま、町を離れる。
隣接する町、市、県を越える。
現実からの逃避行?夢からの逃避行?なのか…。
ありとあらゆる場所を訪れ、彼女との大切な時間を過ごした。
そして、片時も彼女から目を離さないでいた。
アミューズメントパークや映画など行く所では、俺達に接する者はいない。
言葉をかけても、返してもらう事も無く。
どこに行っても貸し切り状態であった。
「変な感じだんね…」
A子は、どこに行っても必ずこの言葉を発していた。
よく、『世界を敵に回しても戦う…』などという感じの台詞がある歌や物語があるが、その時の俺は、まさしくその状態であった。
孤立している世界での生活も数日過ぎていた。
彼女を守る事だけを考えながら過ごしていた数日であった…。
その時間の中でも、強く二人の存在、二人の生を感じられたのは、夜、寝静まった部屋に広がる彼女の寝息だけであった。
微かに聞こえる彼女の寝息が、彼女の存在を強く、そして、確固たる形にしていた。
それだけで、俺は、生きていると実感していた。
別に彼女がいても、今は、A子を守ると誓っていた。
この先に何が起こるかわからないが…。
それがどんな事であっても、俺は、今を大事に生きようと、いつも夜に…A子の寝顔に思い、誓っていた。
そして…。
A子に会ってから6日目の夜。
俺達は、いつものようにホテルに部屋をとり、再び眠りにつこうとしていた…。
町を見下ろす程の高いホテルではなかったが、そのホテルの最上階に部屋をとった。
ホテルの部屋の窓から外を眺めていたA子は、力なく言葉を発した。
「…そろそろ…。帰ろうかな…。」
その言葉に、ソファーで横になっていた俺が反応する。
「…えっ、どうして?」
A子はゆっくりと俺の方に向かって振り返った。
「時間が来るの…」
「時間?」
A子は頷いた、そして、ゆっくりと俺に近付いてくる。
「会えて良かったよ、でも、もう迷惑はかけられない」
と言いながら、ソファーに横たわっている俺の側に来る、そして、床に膝をつけ、目線を俺に合わせた。
「迷惑なんて思っていない!!俺は…」
A子の人差し指が俺の唇の動きを止めた。
唇から伝わる、冷たく弱々しい女性の感覚…。
俺は、A子を見る。
すると、A子は微笑みながら言葉を発した。

「ありがとうね。沢山、いい思い出が出来た。楽しかった…」
と言いながら、俺の唇から指を離し、そして…、自分の唇を重ねた。
その感覚は、俺の全てを包み込んだ。
A子は、ゆっくりと瞳を閉じた。
俺は、その行動を見てからゆっくりと彼女を抱きしめると、徐々に力を込め、自分の横になっているソファーへと彼女を誘った。
彼女の唇が俺から離れる…。そして、彼女は俺を見つめた。
吸い込まれそうな瞳を、見つめ返す。
沈黙が少しあり。
彼女がゆっくりと瞳を閉じながら小さく言葉を発した。
「…抱いて…」と…。
そして、俺の胸に顔を埋めた。
俺は、彼女の言葉に瞳を閉じた。そして…。
強く抱きしめ、彼女を…。
熱く、強く、想いを込めて抱いた。
彼女は、小さな吐息と共に俺の全てを受け入れた。
ありとあらゆる彼女の全てを、俺は無我夢中で求め、彼女も俺の全てを無我夢中で求めた。
その行為は、果てる事を知らず、夜を通して続いた。
何度、彼女の中で果てただろうか…。
俺の中で、何度彼女は果てただろうか…。
シーツの海で、俺達は魚になり小さなベッドの海の中でお互いを確認した。
これが、愛であったのか、それとも…。
記憶が途切れ始め、彼女の切ない表情も薄れる頃には、辺りは朝を迎えていた。

そして……。

翌日、俺達は言葉もないまま、地元に帰り、俺はA子を家まで送り届けた。
別れ際、彼女は微笑みながら、
「もし…、私に何かあったら、私の生きた証を探して…、形見にしてね…」
と、微笑みながら言い残し、車から降りた。
俺は、そんな彼女に向かって、
「明日、また来るよ!」
と言う。彼女はその言葉に微笑み頷きながら車のドアを閉めた。
か弱く微笑む横顔が長い髪に隠れると、細く小さな背中が何かを物語っているように感じた。
その後ろ姿を見送る…。
自宅へと歩き始めたA子。俺は、その姿を黙って見ていた…。
……。
彼女の後姿に、何かが頭の中を駆け巡った…。
冷たい感覚…、痛い感覚…、奇妙な感覚…、そして、見覚えのある感覚…。
その感覚がはっきりしない事のもどかしさに、少し苛立ちを感じたが、その苛立ちをあたる場所も無い事に深呼吸をして、彼女の後ろ姿を見送った。
家に吸い込まれるように消える人影に、夕べの事を思い出した。
確に現実なのだろう、再び明日がくるだろう…。
今もまだ、A子の温もりをはっきり感じている掌を見て、そう思っていた。

彼女が玄関の扉を閉じるのを見届けると、家路についた。
そして、彼女との長い一週間は過ぎた…。

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2008年7月24日 (木)

A子に会う!!

駅前に着くと、俺は車をゆっくりと進めながらロータリーを回った。
多くの人がいたが、直接俺を見ている訳ではないので、会社とは違う自然な人の流れを感じた。
そんな中で、A子を捜した。
バス停そばに車を止めるスペースがあるのに気付くと、車をその場所に止め辺りを見回した。
すると、建物と建物の隙間から大きなサングラスが印象的な人影がゆっくりと顔を出したのに気付いた。
その人影は、あたりを見渡してから、俯きかげんで隙間から出てくると足早に車に近づき、勢い良くドアを開け、転がる様に屈みながら助手席に収まった。
その人影は女であった。
甘い香りを纏っているように感じられた。
その香りが車内に広がる。
…この子はA子?
大きめのサングラスを掛け、頭には花柄模様のスカーフを被り、大きな花柄が散らばっているワンピース姿で甘い香りを纏いながら車の助手席に収まっている女を見た。
レトロな雰囲気が漂う。
真っ赤に塗られた口紅がヤケに嫌らしく娼婦の様に感じた。
彼女は、うつ向き何も言わない。
…。
ふと、外に目を向けると、騒がしくなっていたのが見えた。
数人が、目を凝らしながら指をこちらに指して話をしているのが見えた。
たぶん、彼女の行動が発端であると思い、とりあえず、その場を後にする為に車をゆっくりと動かした。
何処に向かうでもなく…。
俺は、小さな町を俳廻した。
どの位そうしていたかわからない程、沈黙だけが時を長くも短くも感じさせた。
そして、町外れの農道に差し掛かった時に助手席の女が小さく言葉を発した。
「ありがとう、待っていた。ずっと…」
と、俺は意味が解らなかったが、小さく微笑んで頷いた。
すると…、
彼女はゆっくりと印象に残るような口調で、
「これからは、【現実】だから。」
と真っ赤な唇をゆっくりと動かして言った。
…えっ、なに?現実…?
俺は、彼女のサングラスに映る自分を見ながら、ふと似た言葉を何処かで聞いた事があったと思った。
いつ、どこで聞いたかは分からないが、確かに聞いた事のある言葉であったのに、頭をフルに使って思い起こした、が、はっきりした事を思い出す前に、再び意味が分からなくなった。
…これは、夢ではない?現実なんかぁ?
頭の中を彼女の言葉が駆け巡った。
彼女は、下を向いたまま言う。

「わたし、危険なの。」
と、そして、ゆっくりとサングラスとスカーフを外した。
肩まである髪が綺麗に揺れながらおりてくる。
再びいい香りが車内に広がり。
「わたしを助けて。」
といいながら、俺の手を掴んだ。
彼女を見る。
そこには、まだ少女の瞳、面影を残した懐かしい顔があった。
A子であった。
鼓動が激しく打つ。
その意味は分らないが、彼女の言葉、表情でただならない事が起こっていると感じた。
そして、彼女の言葉の意味は解らないが、助けを求めているなら助けなければ、と言う使命感に被われた俺は、彼女を乗せたまま宛てもなく町を離れた。
…助けるとは?…。
の意味を考えながら…。

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2008年7月23日 (水)

見覚えの無い事…

社内をさまよっていると、ふと、何かに諭された訳でもなく、ある人物の顔を思い出した。
その人物とは、会社で仲良くしていた70を過ぎる背の小さな爺さんだった。
年の功か、今までも色々な事を聞いた。
不思議な話も、この観光地が前に鉱山だった頃の出来事や地域の出来事等…。
その爺さんなら、この事の真意が判るかもと、安易ではあったが藁をも掴む気持ちで一杯になり、爺さんのいる管理部門の部屋がある施設へと足早に向かった。
その部屋がある場所は、敷地内にある博物館の建物にあった。
博物館は、この地域の歴史や鉱山の歴史を紹介、遺物等を展示している場所であった。
が、はっきり言って大きな建物では無く、じっくり見ても10分も掛からない位の規模であり、自分で言うのも何であるが、つまらない博物館であった。
その博物館に着くと、横の勝手口から中に入る。
鉱山らしい、鉱石の石臭さが漂う空間へと入り、そして、その空間を抜ける為の扉を開け、爺さんがいる部屋へとなだれ込んだ。
!!
勢い良くその部屋に入るなり、俺は驚いた。
会おうとしていた爺さんは、自分の席に座り、まるで俺を待っていたかの様にこちらを向いていたからだった。
一つ息を呑んでから。
「爺さん、みんななんか変だ!」
と話し始める俺。
その時、爺さんの右側の目は偽眼であったが、その偽眼が金色になり、異様な程に重い輝きを放っていた事に少し驚いた。
再び息を呑む。
爺さんは、冷静な口調で話し始めた。
「お前はとんでもないものを見た。鏡の中の住人は怒っているようだ、お前はもうダメだよ、お前にこれから長く接する者は、お前と同じ運命を辿る。夕べ、私の夢に出てきた!多分、全ての者の夢にも出てきただろう…。だから、お前と誰も接しないのだ。」
「…?なんだそれ?」
「お前は、わからないのか?」
俺は、その言葉に対して色々考えたが、その時は分からなかった。
「…鏡の中の住人?…誰だ、それ?」
「お前が分からなければ、仕方ない事だな。だが、俺はもう長く無いからな…」
と笑みを見せた。

「どうしたらいいんだ?」
「わしにも解らない…」
と言いながら首を横に振り、一呼吸を置いてから俺を鋭い眼光で見つめ直し、再び爺さんは語り始めた。
「だが、こうなった事でお前自身が全てを見失い、諦める事は、お前にとっても良くないと思う。こう言う状況だからこそ、自分の信念を持ち接するのだよ。そして…。後は念ずるのだ!!私が言えるのはこれだけだ、後はお前が解決するんだ…。」
…訳が解らない。
爺さんの言葉には、的を射ている言葉が有ったとは感じられなかった。
鏡の中の住人とは誰だ?俺は、益々混乱していた。
宛てが無い…とりあえず、管理部門の部屋を後にした。
爺さんの扉を開けると、再び鉱石の石臭さが漂う空間へと入る。
すると、その空間の薄暗い場所に同僚のTがいた。
彼と目が合う。
Tは、小さく微笑むとゆっくりと言葉を発した。
「A子ちゃんが、『駅前で待っている』と、さっき電話があった。頑張れよ…」
と…。
その言葉を話すと、そそくさと俺から離れ、最後の扉を開けて博物館から離れた。
「…T!!
俺は、Tの名前を呼びながら、最後の扉を開けた。
すると、眩しい日差しが瞳を遮った。
ゆっくりと瞳をあけ、手で影を作り、目を外の明るさに慣れさせながら外の風景を見た、そして、Tを探した。
しかし、もう既に彼は何処かに行ったか、隠れたか分からないが、彼の姿を確認することが出来なかった。
俺は、彼が言った言葉を思いだしていた。
「A子ちゃんが、『駅前で待っている』と、さっき電話があった。頑張れよ…」
その言葉。
A子…彼女は、前の年の夏にバイトで来ていた女の子であった。
妹の気持ちで接していた女の子の名前だった、が、その時は、すでに東京で働いているはず…この地域には居ないはず…。
俺は、嫌な胸騒ぎを抱えながら、A子が待っていると言う駅前に車で向かった。

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2008年7月22日 (火)

理不尽な現実…

そうこうしている内に会社に着く。
駐車場から仕事場までは、少しだけ歩かなくてはならなかった。
歩道を重い足取りで会社まで進んだ、その間も色々な事を考えた。が、結論らしい結論は出てこなかった。
会社に着くとタイムカードをきる。そして、いつもの様に仕事場へ向かった。
狭い廊下を抜けると、ヒンヤリとした空気が流れる場所を通る、そこを抜けると仕事場が見えた。
俺の仕事は、観光地でお土産品を販売する仕事をしていた。
何の仕切りも無く、かなりの面積を持つフロアーへと着く。
そのフロアーには、多くのお土産品が展示されていた。
鉱物売り場から始まり、漬物や麺類、お菓子売り場、おもちゃや小物が売られている場所、一番奥には貴金属類が売られている場所があった。
その中の一番奥の貴金属や装飾品の土産物を売っている場所が、俺の仕事場だった!!
いつもの調子で、そのフロアーに立ち辺りを見渡す。
すると、フロアーの一番奥、俺の仕事場の前で仲間が輪になって何か話しをしていた。
そこにいたのは、5名の女性と2名の男性社員であった。
女性社員は真っ赤な制服やエプロン姿、男性社員はブレザーを羽織っていた。
全てが顔なじみであった。
俺は、いつものように笑顔で声をかける。
「おはよう!!」と…。
すると。俺の声に仲間が振り返ると同時にクモの子を散らしたようにバラバラになった。
…?
何が起こったんだぁ?
唖然、呆然とする俺。
いつの間にかフロアーには俺一人となった。
静かに流れる風を感じていた。
俺は、今の状況を把握できずに、色々な事が頭を駆け巡っていた。
…今の仕事?今の彼女、“K子”の事?夕べ遅くなった事?お金の事?
そして…家での出来事…。
何が起こったのか、本当に分からなくなり、プチパニックに陥ってしまった。
仕事も順調、彼女も順調、お金はあまり持っていないが、迷惑はかけていない…。なのに…。
その状況から抜け出せなく、全てが上手く行っていたとは言えないが、悪いとも言えない、人並みな生活を平凡に過ごしているのにと思った途端に悲しくなり、少しだけ、涙が出そうになっていた。
パニくった頭で、再び色々考える。が、答えは同じであった。

散らばった仲間達を探す為に、売り場玄関の両開きの扉を力強く開け放つ、すると、暖かな日差しと共に心地良い風が売り場へと流れ込んできた。
その風を感じながら外へと飛び出す。
そそくさと逃げる様に遠ざかる数人の仲間が目に入ってきた。
俺は、その内の一人。
同期入社のM子へと向かって駆け出した。
足早に逃げようとするが、走りには自身のあった俺。
すぐにM子の腕を掴み、動きを止めた。そして、その真意を聞く。
しかし、彼女も物凄い剣幕で「出ていけ!」や「話しかけるな」と言うだけだった。
その勢いに、母親の時と同様に手を離す。
…俺、何かしたかぁ?
狐に摘まれた感じとは、この事なのか?と感じていた。
まったく身に覚えも無く、ただ嫌われているだけ?なら、理不尽すぎる状況。
意味があるなら、教えてくれと神にでもすがりたい気分で一杯だった。
散らばった仲間達は、遠目で俺を見ている。
立ち尽くしているだけでは、意味が無い事も分かっていた。
再び、悲しくなった。
まったく、何が起こったのだ?
と焦るだけで、頭はプチパニックから本パニックになりかけていた。
この状況から逃れる為にはと思いながら、俺は、重い一歩を出し、行く宛てなく歩き始めた。

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2008年7月21日 (月)

妙な現実…

あの夢は?…。
妙な違和感を抱きながらベッドから起きると、辺りを見渡した。
薄暗い部屋には、小さなテレビにコンポと丸いテーブル、その上は、タバコの吸い殻が山になっている灰皿とバーボンのビンが数本転がっていた。
異様な匂いがする…。
タバコの匂いと甘ったるいバーボンの匂い…。
…これが男の匂い?なのだろうか…。
はっきりは言えないが、だいぶ前から感じていた、異様であり、慣れた匂い…。
そう、そこはまさしく俺の部屋である。
その匂いに少し苛立ちを感じ、また、換気をしなければならない使命感を持ちながら、ボサボサの髪を掻き捨てる。
いつも思っていた事…。
換気に掃除…。
それだけで憂鬱になった。
いつもの朝だった…。
憂鬱な気分の中で夢の事を思い出す。
…それにしても妙な夢?だったな。
暖かな温もりを感じながら、ぼやっとした記憶の中でそう感じていた。
…それにしてもリアルだったな…、あの風の感覚は、確かに体で感じた…。
俺は、腕や肩をさすりながら、冷たく流れた風の感覚を思い出していた。
それから、ゆっくりとベッドから出て、固まった体を伸ばす。
そして、散らばった本や紙くず、タバコの空き箱やバーボンの瓶が散らばっている床を足で払い除けながら窓辺に近付き、カーテンを開けた。
シャーっと小気味の良い音と共に異様な程に眩しい朝日を体で浴び、外の風景を見る。
…今日は?
ふと感じた違和感。
俺は、見慣れているはずの風景に違和を感じた。
が、あまり深くは追求せずに自分の部屋を後にした。狭く急な階段を降りると、居間を通り台所に向かった。
台所に着く。
軋む床をテンポ良く進んだ。
台所には人影が無く、テーブルには、暖かそうな湯気を立てている朝食が並んでいる。
一度辺りを見渡してから、ゆっくりと席に着く、すると、足音も立てずに母親が俺の目の前に現れた。
そして、向かいに座ると…。

…?
俺は母親をみる。
…?
俺の目に映し出された母親の目は、今にも大粒の涙が小さな瞳から溢出そうとしているのを堪える様に硬く力強く閉じていた
…?
俺は、そんな母親を見ながら、白く湯気の立っているご飯を口一杯にほお張る。
その時は、親父とまた喧嘩でもしたのだろうと思い、気にも留めていなかった。
!!
次の瞬間、堪えていた涙が滝の様に溢れ、皺の目立つ頬を勢い良く流れ始めた。
…なに!!
口を止めて、母親を見る。
すると、母親は小さな瞳を開けて、涙を流しながら俺に一言。
「さよなら」と言い、物凄い勢いで席を立つと台所を後にした。
俺は、…?
意味が分からない。
すぐさま、母親を追いかける。
居間で母親の腕を掴み静止させ、母親を見る。
母親は、目を合わせずに俯いている。
俺は、母親が言った意味を尋ねたが、口は一向に開かず、その真意については、何も言わない。
ただ「出ていけ!」と物凄い形相で叫ぶだけだった。
その形相に、怖気ついた俺は手を放す。
すると、母親は振り返もせずに居間を後にして、自分の部屋へと姿を消した。
呆然とする俺。
俺は何が起こったのか分からず、少しの間、その場で考えた。
が、母親が取り乱す程の事はしていない…、と言う結論だけが頭を駆け巡った。
仕方なく、部屋に帰ると着替えをして、とりあえず、車に乗り込み会社に向かう事にした。
ゆっくりと車を走らせる。
車から見える風景は、いつもと変わらない…。
怏々たる新緑が一時の安らぎを与え、摩珂不思議な現実から俺を引き離していてくれていた。
しかし、それもしばしの事であった。
母親の涙、そして形相、言葉…。が、俺を駆け巡ると、再び色々な事を考えた。
…今の仕事?今の彼女、“K子”の事?夕べ遅くなった事?お金の事?
一番乱すとすれば、確かにK子の事は、両親にはちゃんと紹介できていなかった事ではあったが、その事で取り乱すだろうか?
全く持って、意味が分らなかった…。

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2008年7月20日 (日)

これは【夢】だから…

それは、突然やってきた!!
あの夢から約一年後の冬。
 
俺は、以前感じた事のある冷たい風の感覚に目を覚ました。
ゆっくりと瞳を開ける。
すると、目の前に広がっていた風景は、以前とは違う風景であった。
真っ暗な空間。
俺は、目が慣れるのをその場で待ち、そして、慣れ始めた頃に辺りを見渡した。
俺のいる場所は、ゴツゴツとした岩肌の洞窟。
それも、幅の広く先の見えない程の大きな洞窟の中だった。
冷たい風が、どこからともなく吹いてくると俺を包み込んだ、その感覚を抱いたまま辺りを見渡し、ふと上を見上げた。
そこには、ぽっかりと開いている三角形の口が見えた、その向こうには満天の星空が無数の煌きを放っている、吸い込まれそうな夜空が見えていた。
その口は、這上がる事は出来そうにはない程の高い位置にあった。
俺はため息をつきながら出口を探そうと思い、薄暗い洞窟の前後へと目を向けた。
わかる訳がない…。
途方にくれていると、暗闇に包まれている洞窟の向こうから子供の声が微かに聴こえてきた。
…?
俺は、とりあえず、子供の声の聴こえてくる方へと歩み始めた。
どの位歩いたか分からないが、やがて目に見えたものは、木製で見上げる程の大きな扉だった。
その扉の前で数人の子供らが遊んでいる。
俺は、その扉が出口だと思い近付くと、俺に気付いた子供らは動きを止め、俺に視線を向けた。
その目は…。
俺は扉の前に立つと、一度子供らに視線を向けた。
そこにいる子供らは6人。
白髪の男の子と背中を覆う程長い髪の女の子
短い髪の女の子に野球帽を被った男の子。
そして…両側から三ツ編みの髪を垂らした女の子と髪の毛…いや、体に毛らしきものの無い男の子が、揃いの質素な着物を着て俺を不思議そうな瞳で見ていた。
俺は、小さく微笑みながら扉へと視線を向けた。
そして…、次の行動を考えようとしたその時!!

痛い程の冷たい感覚が左手首から感じ、背筋に緊張が走った。
ゆっくりとその感覚を確かめる。
すると!!

俺の左手首をまったく毛の無い色白で目玉の大きな男の子が掴んでいた、そして、盛んに「うぅ、うぅ…」と声では無い、獣の様な声で扉を指差している。
その表情は、…いかにも…と言う表情であり、少しだけだが悪寒が体を走った。
男の子は盛んに俺を、扉へと誘う。
…やっぱり?
と思いながらゆっくりと右手を扉に向けると、男の子は薄い笑みを見せた。
…?
俺は不審に思った瞬間、その手を三ツ編みの女の子が掴んだ、そして。
俺は、女の子を見る。
その瞳は大きく、俺をしっかりと映していた。
女の子は、はっきりと力強く言葉にした。
「その扉は、決して開けてはいけないよ。出口はあっちだよ。」
と、そして、右側の薄暗い洞窟の向こうを指差した。
俺は、彼女が指差した方向へと目を向けた。
すると、再び左手首に痛い程の力を感じ、俺はその力を確認すべく男の子を見た。
男の子は、怒りの形相を浮かべながら目を大きく見開き、女の子を睨んでいた。
それは、今にも襲いかかりそうな感じであった。
俺は、すぐさま女の子を見る、女の子の表情は、悲しみに満ちた瞳が印象深く、俺に対して何かを求め、何かを訴えている感じがした。
二人の表情から俺は女の子の差す方を選び、ゆっくりと歩み始めた。
痛い感覚は、なかなか放れず、半ば強引に振り払いながら、その感覚から逃れた。
そして、女の子に引かれるがまま、その場所を後にした。
数歩行くと、女の子が立ち止まり、俺を見上げる。
すると、女の子は俺に向かって言葉を…、ゆっくりと放った。
「…これは【夢】だから…」と。
意味は分からないが、妙に引っ掛かった。
女の子は、掴んでいた手を離すと小さく微笑む。
俺はその微笑みを見ながら、女の子が指した方向へと歩き始めた。
女の子が言った、言葉の意味を理解しようはせずに…。
…そう、当たり前かも知れないが、これは【夢】だから…。
何度か振り返り、子供らを見た。
子供らは、俺を見ている。
色白の目玉の大きな男の子は、うつ向きかげんで睨んでいるようだった。
女の子は、瞳が少しうるんでいた。
子供らを肉眼で確認出来なくなった時、暖かい陽射しに目が覚めた。
いつもの朝がきたつもりであった…。

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2008年7月19日 (土)

始まりの夢へ…

俺が昔見た、摩可不思議な夢の話しをしたいと思う。
何故?と思うだろう。

それは…。
今日、会社で昼寝をしていた時に見た夢が発端である。
その夢にちらっとだが彼を見た。
その男に、俺は無性に震えた…。
その夢の内容は…。
俺が、会社のトイレで用を済ませた夢であった。
用を済ませたかは定かでは無いが、その時、その男は、鏡の中から俺を見ていた。
真っ白の仮面で…。
冷酷でいやらしく輝く瞳で…。

鏡を見るのが怖い、…今でも…。
その男とは…。
 
…あれは、俺の記憶が確かなら22歳の時だったはずだ。
誕生日の近い冬だったはずだ。
いつものように眠りについた俺は、冷たい風が体を通り過ぎた感覚の中で目を覚ました。
そこは…、
霧に包まれた、公園が見える林の中であった。
深い霧が辺りを包み込み、ほんのわずかな範囲だけが視界に入っていた。
俺は何かに呼ばれている様に両手で辺りを確かめながら先に進んだ。
林を抜けると、霧は薄っすらと晴れ、月夜に輝きを満たした公園が視界に入ってきた。
その公園の中ほどには6本の木が三角形に生えている場所が目立つ様にひっそりと見えた。
俺は立ち止まる。
眼を凝らしてその場所を見ていると、その木の下にいる人影に気付いた。
…女だ!
その女であろう人影は、真っ白いドレスを着ていた。
その女は、俺の方へ背を向け立っていた。
長く背中中ほどまである髪には、艶があり、印象的な色の配分を見せていた。
白と黒…。
俺は、その場で少し女の様子を伺った。
…これは夢?…。

そう思っていた。
どうしたらいいのであろうかと悩んでいると、女は、ゆっくりと横に顔を向けた。
その方向へとゆっくり視線を移す。
すると、女が見た方向から黒いマントを羽織った男がゆっくりと近付いてきた。
俺は、これから何が起こるのか薄々気付いていた。
男はシルクハットを被り、襟の高いマント姿であった。
顔は見えない。
女の横に男が来ると、女の肩に手を回して何かを語りかけていた。
その後、女は小さく頷くとゆっくりと三角形を作り出していた木々の間へと歩み始めた。
男は俺に気付いたのか、こちらに顔だけ小さく向けた。
男の顔は……。
仮面?
真っ白く表情の無い仮面が異様に浮き立ち、黒く大きく空いた目の部分のその奥に瞳が不気味に浮き上がっていた。
俺は、体全体に痛い程の恐怖が走っていたが、逃げる事も無く、その場で男を凝視した。
男は何かを言っている…。
仮面が小刻に動いていた。
だが、俺には、聞こえない。
男はその後、女の後を追って歩き始めた。
…あの子は、ダメだな……。
何故か、そう思っていた。
…そして…。
俺は、目が覚めた。
何か心に残る夢だった。
うっすらと鳥肌がたっていた。
…が、全ては夢とその時は思って気にも止めていなかった。
…その時は…。
一年後の夢に繋がる夢とは……、
思ってもいなかった…。

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2008年7月18日 (金)

予告!!

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Realistic Dream EPISODE Ⅰ              The First Impact

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すべは…あの夢から始まった!!

少女が言った。

「これは、【夢】だから…」と。

「ここからは…【現実】だから…」と。

彼女が言った

そして…

「ここからは、【夢】か【現実】か、あなたが決めて!!」と。

恋人が言った…。

白いドレスの女…が佇む、深い霧に包まれた公園

その女の側に近づく、シルクハットに襟の高いマントを着た男…

俺は、その風景を見つめる…

この夢は…ごく普通の夢だったはず…

この…夢は…

一目散に駆け出す同僚の影、生暖かい風の吹き込んでくる部屋

微笑む男・金色の義眼の老人

泣き叫ぶ母親

睨む父親

恋人の瞳

そして…

ぼんやりと浮かぶ美女達と無残に切り裂かれても尚、行き続けている男達

レトロチックな花柄のワンピース姿の女

頭からスカーフをとると、長い髪がゆっくりとおりてくる。

そして…小さく微笑むと…。

Realistic Dream EPISODE Ⅰ【The First Impact

いよいよ再臨!!

ご存知、【モバゲータウン】にて

連載した作品が、新しい文面で再び連載開始!!

今度は

WEBページで!!

秋田県は鹿角市で起こる

全ての悪夢は、やがて、世界を包み込む!!

Realistic Dream EPISODE Ⅰ【The First Impact

この物語は、やがて

【伝説】

なる!!

7月19日

いよいよ、公開!!

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2008年7月 9日 (水)

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