現実へ帰る!!
俺は…その声に目が覚めた。
鼻に妙な違和感を抱きながらベッドから起きると、辺りを見渡した。
薄暗い部屋には、小さなテレビにコンポと丸いテーブル、その上は、タバコ吸い殻が山になっている灰皿とバーボンのビンが数本転がっていた。
異様な匂いがする…。
タバコの匂いと甘ったるいバーボンの匂い…。
…これが男の匂い?なのだろうか…。
はっきりは言えないが、だいぶ前から感じていた、異様であり、慣れた匂い…。
そう、そこはまさしく俺の部屋である。
その匂いに少し苛立ちを感じ、また、換気をしなければならない使命感を持ちながら、ボサボサの髪を掻き捨てる。
いつも思っていた事…。
換気に掃除…。
それだけで憂鬱になった。
いつもの朝だった…。
憂鬱な気分中で夢の事を思い出す。
…それにしても妙な夢?だったな。
暖かな温もりを感じながら、ぼやっとした記憶の中でそう感じていた。
…それにしてもリアルだったな…、あの夢の感覚は、確かに体で感じた…。
俺は、腕や肩をさすりながら、痛く、恐怖を感じた感覚を思い出していた。
それから、ゆっくりとベッドから出て、固まった体を伸ばす。
そして、散らばった本や紙くず、タバコの空き箱やバーボンの瓶が散らばっている床を足で払い除けながら窓辺に近付き、カーテンを開ける。
シャーっと小気味の良い音と共に異様な程に眩しい朝日を体で浴び、外の風景を見る。
…今日は?
雪か…。
視界一面には、純白の雪景色が映った。と同時に、夢の中での違和を思い出した。
…そう言うことだよな、今は、冬だもんだ…。
一つ深呼吸をすると、鼻に違和感を覚えた、恐る恐る手をで触れ、その触れた手をみると、指に血がついてきていた。
少し考えてから、部屋にある壁掛けの鏡を恐る恐る見た。
鏡に映し出されたのは…。
鼻血を流し、顔と首に手の平の様な赤い跡が残っていた俺の顔だった。
よく見ると少しだけ瞼も腫れ上がっていた。
一つ溜め息をしてから痛い体をゆっくりと動かし、部屋を後にした。
ゆっくりと階段を降りる。
全ての行動を確認しながら、居間を通り、台所に入った。
台所では母親が朝食の準備をしていた。
…
なにも言わずに、その後姿を見ている。
母親は、俺に気付きもせずに、しっかりとした動きで朝食の準備をしていた。
その答えが、あれと同じなら…。
不安が頭をよぎったが、このままでは始まらない。
「おはよう」と恐る恐る声をかけると、母親はなにも言わない。
…まさか?と思いながら、再び「おはよう…」と声をかけた。
すると振り返り。
驚きの表情で、俺に話しかけてきた。
「どうしたの!その顔。また喧嘩してきのか?さぁ、風呂入って来な」
と俺を巻くし立てた。
俺はその言葉に、小さく照れながらホッとした。
そして、母親の言葉通りに風呂へと向かった。
風呂に入ると肘が血だらけになっていた。
…あれは、現実?
俺は、朝食を食うと会社に向かった。
会社に着くと、誰もが俺を見て心配していた。
あれは…夢だよなぁ~、でもこの傷は…?
俺には、まったくわからなかった。
会社が終わり、また一日が暮れた深夜。
家の電話が鳴った。
俺は、その電話にでる。
「もしもし…」
次の瞬間、俺は耳を疑った。
…A子。
そう、A子からの電話だった。
「久しぶりたね。どうしていたぁ?」
「あぁ、変わり無しに生きていた。そっちは?」
「ん?私も変わり無しだね」
他愛も無い話しをして、数十分、そろそろ電話を辞めようと思った時、彼女が言った言葉に、俺は背筋に悪寒が走った。
「ねぇ~…ありがとう。これが言いたかった…」
…嘘だろう!
俺は、曖昧に答え電話を切った。
………。
あれから10年以上が経ち、彼女も結婚したと言う噂を聞いてホッとしついた。
もう…終わった……。
はず……。
俺は、今、別の会社で働いている。
その日も、いつもの様に昼飯を食って昼寝をした。
そして、昼休みが終わり用を足して鏡を見たら、
…!!
男は俺を見ていた。
鋭き不気味に輝く眼孔で……再び戦慄が体を駆け巡った。
そして、目が覚めた。
俺は再び、あの世界に足を踏み込んだのか……。
その時は、近いと言う気がしている……。
…そして、2年後の…。
…【断片的な夢】へと繋げたい…。
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